新作の絵について

新作の絵について

グループ展開催中ということで、新作の水彩画について、備忘録も兼ねて。

これまでのようにぎゅうっとまとめた詩や、口下手な短い言葉よりも少し長い文章で、絵について言葉にする挑戦をしてみる。

2017- 「Listening carefully」シリーズ

展示している水彩画は、大小3点。
タイトルはそれぞれ、「to Good Sounds 01、02、03」。

ドイツより帰国後の2017年からしばらく制作した「Listening carefully」シリーズがあり、その続きとしてタイトルを付けた。

作品やシリーズには、解説というか詩を添えることがあると以前にも書いたけれど、当時「Listening carefully」シリーズへは、この言葉を添えた。

If you feel something weird,
try to stop talking and just listen carefully.

「もし何か変だと感じたら、話すのをやめて、耳を澄ましてみて。」

他人や世の中全体に対して、急に違和感を感じたり、
普段ならなんでもないことを、やけに気にしてしまったり、
なぜだか自分が、まるで自分でないように感じたり…。

「わたし近頃、何かおかしい」

ひとに悟られたくないから家に閉じこもったり、必死に、いつもと変わらないような振る舞いをしてみたり。

または、会う人々に対して自分の、不安や不満や違和感などを口にしたり。

そんな時「わたし」の身体は居場所が無いようでふわふわとして、表情も歪んで、まるで助けを求めているみたい。
ネガティブなことを考えたり口にしたりする度に、この「何かおかしい」感じは増してゆき、いつまで経ってもよくならない。

「わたし」は、どうしようもなくなり立ち止まって、話すこともやめた。

そうして静かになったおかげで、徐々に思考が明瞭になり、シンプルに考えられるようになってきた。

「何がおかしいのか?」
「なぜ自分は苦しんでいるのか?」
「本当は自分はどうしたいのか?」

他人ではなく、自分自身に耳を傾けることで、単純でとても大事なことを思い出す。

「わたし」となった人物像を描いたのが、このシリーズなのでした。

「to Good Sounds」シリーズ

こんな風に「Listening carefully」シリーズは、ネガティブな現象から生まれたテーマだった。
耳を澄ませることで、そのネガティブなものを、手放す準備ができるかもしれない。

そして今となっては、それを手放す前も後も、幸せや不幸せと感じる時も、

本当は耳を澄まして、自分の心の声を聞こうとすることは、いつでも必要なことだと思う。

自分の心で鳴った「いい音」が、もしくは大切な人や自然から「いい音」が聴こえてきたら、今度はその音にも注意深く、耳を済まし続けていくのもいい。

新作の「to Good Sounds」シリーズには、そういうおもいを注ぎ入れ、「自然体」であることがテーマになった。

タイトルにも、「Good」というストレートな単語を入れてみた。

水彩絵の具で描く

以前に書いたように、オーガニック水彩絵の具を使い始めた頃に、とにかく描いて遊んで、絵の具と仲良くなる時期を設けた。

普段制作をする合間にも同じようなことをするのだけれど、このフェーズを経て私が得たものは、今の私の好きな水彩の描き方は「絵の具で描く」というより「水で描く」と言った方が、しっくりくるようなものだという気づきだった。

アクリル絵の具を使っていた頃は「紙に絵の具をのせる」描き方。
私の水彩は「紙の上の水に、色を混ぜる」。それがたのしい。

紙質によってはこの水で描くやり方で描くと、水分が蒸発した後に紙の上に、色の輪じみのような水跡のようなものが残る。

水をたっぷり含ませてのせた色が、時間の経過とともに意図しない形を作っていくのが私は好きで、

「いびつだけどきれい」というか、「潔癖ではないけど完全」というか、そういうところが、植物や自然と似ているとも思う。

絵:「to Good Sounds 03」より一部 2021 紙に水彩