なぜ、絵を描くのか?

筍取物語

筍取物語

この春から、以前に増して仲良くしていただいている、お隣のSさん。

ある日夫婦で庭へ出ている際、おしゃべりしているうちに、

「よければタケノコ取りご案内しますよ」と。

タケノコ取り未経験の私たちは、二つ返事で「お願いします!」。

「じゃ、○日後にしましょう」と、簡単に予定を決め、数日間は社会科見学を楽しみにする子供みたいに、わくわくしながら過ごした。

いざ竹林へ

お話によると、Sさんが「任されている」竹林は、なんと我々の自宅から徒歩でも行ける場所だった。

当日、庭で水やりをしている流れで垣根越しに挨拶を交わし、Sさんはトラックで、私たちは歩いて現地へ。

住宅街からすぐの場所なのに、竹林に入ると一気に空気が涼しく、清々しい気分になる。

Sさんは、長年使っているのであろう小さな道具やシャベル、採ったタケノコを背負って帰る「しょいこ」を持ち、慣れた感じでどんどん藪へ入ってゆき、私たちはその背中を追いかける。

「しょいこ」

藪を登ってゆくと、小さなタケノコがちらほら。 これくらいの大きさでも、もう結構大きくなってしまっているらしい。

まず一番上まで行って、下りながら収穫してゆくことに。

プロの技

まずは、Sさんのお手本を見せていただく。

タケノコの周りの土を大きく掘り、根の向きを見極める。

向きがわかったら適切なポイントからシャベルを入れ、テコでぽこっと。

いとも簡単に、ひとつ収穫。

何度かお手本を見せていただいた後に、彼も挑戦。

場所にもよるけれど、周りの土を掘るだけでもとっても大変で、自宅の畑を耕すのとはわけが違う。

根のぎりぎりのちょうどいいところから収穫しないと、実が残って勿体無かったり、その後のタケノコが生えなくなってしまったりするらしく、なかなか難しい。

掘ったあとは、しっかり土をもと通りにしておく。 そうしないと斜面の地盤が崩れてしまうそう。 無知なタケノコ泥棒がそんなことを繰り返して、山が崩れてしまうようなことは、よくあるらしい。
タケノコ泥棒、ダメ、ゼッタイ。

ちなみに私は1、2個挑戦して、早々に助手と応援にまわった。

大きく育ってしまったものは、無闇に竹が増えてしまわないように、Sさんのよく切れるノコギリナイフのような道具で切ってしまう。

これはそこまで力を要さないので、私にもできた。

Sさんはこうして毎年、竹藪を管理されているのだなぁ。

けもの道

途中Sさんが、フェンスの向こうに不自然な落ち葉の搔き分けが続いているところを指して「これはタヌキの通り道」。

その近くには、タヌキのトイレ。 いつも決まった場所にしていくらしい。
よく見ると、どんぐりなどの木の実がたくさん混ざっていた。

自宅近所に野生動物の暮らす痕跡が見れ、ときめく私たち。

どっさり収穫した獲物を袋に詰めて、しょいこへ。

慣れた手つきと巧妙なロープワークに、またまたときめく私たち。

彼はここからのくだり道を、しょいこを背負わせてもらい、感動していた様子。

収穫と下処理

「それじゃあ、また後で」と言って別れ、帰宅後Sさんのガレージで再び合流。

トラックにタケノコを広げ、下のほうの皮を剥き切り落とす下処理の下処理の作業を、Sさんが手早くこなしてゆく。

そのあとのさばき方を、いくつか実践して私にレクチャーしてくださった。

我が家と、私の家族と友人に送る分をいただいて帰り、時間の経たないうちに処理。

一度にたくさん茹でられるようにと、おっきなお鍋もお借りした。

皮剥きの作業だけでもひと苦労。

沸騰したお湯で、あくを取りながら40分ほど茹で、そのまま一晩置いておく。

タケノコのグリル

茹でたもの以外の小さなタケノコたちは、焼いても美味しいのだと教わり、その晩に早速やってみる。

刺身同様、採れたてならではの楽しみ方なのだとか。

皮ごとアルミホイルに包み蒸し焼きに。

熱々で、何重にもなっている皮を剥くのがたいへん。

取り出した実を、お醤油や麺つゆでいただく。

ちょっぴり苦味があって、お酒にとても合いそうな、大人な美味しさ。

つづく